かつて世界には、“Made in Japan”の製品が溢れ返っていました。日本式の経営手法が、“Japan As Number One”と高く評価された時代もありました。しかし、30年以上経った今、一部の業界を除けば苦戦しているのが現状です。それは、なぜか。製造業に元気がないからだと私は考えています。
パソコンも家電も他国のメーカーにシェアを奪われ、日本製品が売れなくなってきた。かといって、巻き返そうとする戦後の高度成長期のようなハングリー精神は失われています。じゃあ、今後の日本はどんな成長戦略を描くべきか。国際競争力が下がったとはいえ、GDPは中国、アメリカに次ぐ世界第3位です。現実的に考えて、日本の基幹産業である製造業でしか、成長ストーリーは描けないと考えています。
活路は、あります。それは、生産する製品そのものではなく、生産する“技術”を切り札として世界と闘っていくことです。生産技術の領域では、日本は現在も世界でトップクラス。FA(ファクトリーオートメーション)に欠かせない産業用ロボットの世界4大メーカーのうち、2社が日本企業です。FAにとって重要なセンサーも、日本は有数の技術を誇ります。自動車であれば数万点に及ぶ要素部品に目を向けても、品質、性能、コストパフォーマンスで世界から高く評価されています。こうした生産技術や、その集合体である工場に、デジタル技術を融合させることで新しい価値を与える。そんなコネクテッド・インダストリーズこそ、日本の製造業を元気するシナリオであり、私たちFAプロダクツが目指すゴールでもあります。
インダストリー4.0(第4次産業革命)で、日本が再びトップを獲れる可能性は充分にあります。確実にするためには、これまでのモノづくりで培ったノウハウを“言語化”し、生産設備で“デジタル化”し、工場全体をフレキシブルに改変できるように“モジュール化”する必要があります。また、こうした戦略を現場に合わせて描けるDX(デジタルトランスフォーメーション)のプロデューサーや、シミュレーションやモデリングなどによって戦略をカタチにするエンジニアなど、SI(システムインテグレーター)業界の新たな人材育成も重要です。そういう意味では、デジタルネイティブの若い世代の人たちにも、製造業で働くワクワク感や働きがいを大いに感じてもらえると思っています。
やるべきことは山積みですが、とにかく、日本の製造業のこれからを面白くしたいし、誰もが憧れる人気商売にしたい。そうなれば、日本の未来は明るくなると私は確信しています。