製造現場でよく用いられる治工具(じこうぐ)の導入についてお考えではないでしょうか。
治工具の導入は現場作業の効率化・省力化や製品の高品質化に対して非常に効果的です。事前に「どんな治工具を入れればよいのか」「どのような性能を持つのか」などを知っておくことで、より効果的な現場改善につながるでしょう。
当記事では「治工具とはなにか」「治具・工具との違いはあるのか」などの概要やそれぞれの使用用途、種類、導入のポイントについて解説します。
1.治工具とは?
治工具(じこうぐ)とは、治具(じぐ)と工具(こうぐ)を合わせた名称のことです。治工具という独立した道具が存在するわけではありません。
治具・工具はどちらも製造現場では欠かせないものです。製品の品質向上や現場作業の効率化を図る上で、治工具の選定や制作は非常に重要なものといえるでしょう。
(1)治具の概要
治具とは簡単にいえば、素材やその他のモノの「加工」や「組み立て」などを手助けする補助工具のことを意味します。
加工対象物(ワーク)の位置を固定しつつ、切削・溶接などの作業の案内することが可能です。ここでいう案内とは、穴をあけたい位置や切断したい場所を指定したり、加工したい場所へ工具をスムーズに導いたりなどが挙げられます。
治具を使用するメリットは、人の熟練度や疲労に関係なく正確な加工作業を導けることです。同一の形状・品質の製品を多数製造する際に重宝されます。
また作業の効率化によって、作業時間や素材のロスが軽減にもつながるでしょう。
ちなみに、治具語源は英単語の「jig」です。jigは元々「切削加工や工作物の固定などをサポートする器具の総称」という意味を持っており、そこに日本の漢字を当てはめました。また治具は「固定する」という意味合いも強いことから、英語で取付具を意味する「fixture」と呼ばれることもあります。
(2)工具の概要
工具とは、加工対象物を切削・溶接などの加工を実施するために使用する道具や機械のことです。治具がまな板やザルなどの料理をサポートするものであれば、工具は包丁や皮むき器など直接調理に必要なものというイメージが近くなります。
具体的にはいわゆるドリル・エンドミルなどの穴あけ・切削を行う道具や、ドライバ・スパナなどのネジ・ボルトを締めるための道具です。
機械工具以外のスパナやドライバーなどの工具は、基本的に人間が普通の力で使うようにできています。たとえば、工具を使って無理に体重かけた作業や無理やりな締め付けを行うと、工具が破損したりネジ・ネジ穴がなめたりする危険性があるので注意しましょう。
ちなみにドリル・エンドミルなどの切削工具と、マシニングセンタや旋盤などの工作機械をつなぐアダプターの役割を果たすものをツーリングと呼びます。
(3)治工具耐用年数について
治工具耐用年数とは、昭和40年に財務省(当時大蔵省)で定められた「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に記載ある法定耐用年数のことです。
端的にいえば、国が「この期間までなら使用できる」と仮定した年数です。実際の使用期間は日々のメンテナンスや使用頻度によって変化しますが、税法上で基準として一旦決まっています。
治工具は「治具及び取付工具」として3年と規定されています。
ちなみに減価償却とは、長い期間使用されると見積もられた固定資産の取得費用を、法定耐用年数に従って分割計上することです。たとえば150万円の治具であれば、1年め、2年め、3年めでそれぞれ50万円ずつ計上します。
「どんな治工具でも3年間は使える保証がある!」という意味ではないので注意してください。保証期間は各メーカーへの問い合わせが必要です。
2.治具の種類と用途

ここからは、製造現場でよく使用される治具の種類や用途についてご紹介します。自社現場に合いそうな治具探しの参考にしてください。
(1)固定治具
固定治具とは、加工対象物を特定の位置に固定し、外部からの力がかかっても動かないようにするためのものです。たとえば次の用途で使用されます。
- 対象物を加工しやすい位置・角度・向きで固定したいとき
- 振動がある作業で加工対象物が動かないようにするとき
- ドリルや電動カッターで加工するときにズレないようにするとき など
続いて、固定治具の種類は次のとおりです。
- クランプ・バイス(万力):モノを挟み込んで強く締め付けることで固定する治具
- 位置決めピン:モノに開いている穴に差し込むことで固定する治具
- 調整ブロック:モノの角度を水平に調整し固定できる治具 など
(2)切断治具
切断治具とは、加工対象物を所定のサイズに切断したり、切断位置・方向などを正しく導いたりするための治具です。たとえば、次の用途で使用されます。
- 鉄板やパイプを決まったサイズ・長さで切断したいとき
- 手ブレや工具の振動による影響を減らたいとき など
続いて、切断治具の種類は次のとおりです。
- 形決め:対象物を丸形や四角など決まった形に切り抜ける用の治具
- 位置決め:対象物をカットする位置を導く治具
(3)塗装治具
塗装治具とは、加工対象物の塗装を補助するための治具です。たとえば、次の用途で使用されます。
- 塗りたくない箇所を隠したいとき
- 文字や記号などの形状で色をつけたいとき
- 手や足に塗装がかからないようにしたいとき など
続いて、塗装治具の種類は次のとおりです。
- マスキング用治具:対象物に被せて塗装・非塗装箇所を限定させる治具
- ハンガー:対象物を吊し塗装しやすくする治具
(4)溶着治具
溶着治具とは、加工対象物の接着をサポートするための治具です。たとえば、次の用途で使用されます。
- ポリエチレン袋の封をしたいとき
- プラスチック素材同士を接合したいとき など
溶着治具は、熱・超音波・振動などの原理を用いて対象物を接合させます。主な製品はシーラーです。また、なかにはアーク溶接やレーザー溶接をサポートする治具も存在します。
(5)挿入・引抜治具
挿入・引抜き治具とは、加工対象物を決められた位置に挿入したり引き抜いたりするために使用するものです。主な用途は、ベアリングといった「周囲と隙間がほとんどない箇所での挿入・引抜が必要な部品」を扱うときが当てはまります。
挿入・引抜治具の種類は次のとおりです。
- プーラー:ギヤやベアリング、プーリなどの取り外しに使用される治具
- ピン引抜治具:比較的小さなピンの引き抜きに使用される治具
(6)カシメ治具
カシメ治具とは、加工対象物同士を潰したり締めつけたりして固定するカシメ作業(加締め作業)を補助するための治具です。カシメ作業とは、塑性変形を利用して部品を複数接合させる加工を意味します。
たとえばタイヤのチェーンのような穴の空いた対象物の穴を重ね合わせ、間にリベットと呼ばれる金属部品を差し込み、変形させて固定する方法があります。
カシメ治具の種類は次のとおりです。
- プレス式:リベットを潰すタイプ
- スピン式:回転による圧力で加圧するタイプ
(7)その他の治具
治具の種類は、上記で解説した以外のも他にもさまざまなタイプが存在します。セットした加工対象物に曲げ加工を施す「曲げ治具」や、穴などの空洞の部分に他の金属などを入れ込む「圧入治具」などです。
また、直接製造には関係ないものの、品質の状態をチェックしたいときに用いられる治具もあります。たとえば評価治具は、曲げや引っ張り強度などを見るための試験や特性評価に用いられるものです。通電や通信機器の評価試験に使われる治具も存在します。
3.工具の種類と用途

ここでは工具の種類と用途をご紹介します。一般的に使用される身近なものもあるので、再確認の意味でもチェックしてみてください。
(1)ドライバー
ドライバーとは、ネジ(ビス)を締めつけたり緩めたりすることで、パーツの固定や分解を行う工具のことです。誰でも扱える身近な工具ですが、サイズや形が合わないネジに使用したり過度な力を入れたりする作業を行うと、ネジ穴が潰れてネジが回せなくなるので注意しましょう。
ドライバーの種類は次のとおりです。
- プラスドライバー:十字状のネジ穴のネジ用のドライバー
- マイナスドライバー:一文字状のネジ穴用のドライバー
- インパクトドライバー:力を加えることで強烈な回転・前進力が発生するドライバー
(2)スパナ・レンチ関係
スパナ・レンチとは、ボルトやナットを締めつけるために使用する工具です。スパナはアメリカ英語、レンチはイギリス英語で「ひねる」や「ねじる」で意味しています。つまりスパナとレンチは呼び方が違うだけで、基本的には同じ工具です。
スパナ・レンチの種類は次のとおりです。
- スパナ(レンチ):先端の開いた口にボルト・ナットをはめ込んで回すタイプ
- メガネレンチ:先端のメガネのような穴にボルト・ナットをはめ込んで回すタイプ
- ソケットレンチ:先端のソケットを交換することでさまざまなサイズに対応できるタイプ
- モンキーレンチ:口の幅を自由に変えられるタイプ
- 六角レンチ:六角の形をしたボルトやネジを締め込むタイプ
- トルクレンチ:ボルト・ナットの締めつけ作業と締めつけ強さの測定ができるタイプ
(3)挟み工具
挟み工具とは文字どおり、加工対象物を挟む作業を得意とした工具です。丸状のものや鋭利なものなど、挟みにくかったり手では触れられなかったりする加工対象物に使用することが多いです。また、対象物の曲げたりひねったりする作業にも使われるケースがあります。
種類や用途は次のとおりです。
- ペンチ:挟み・締めつけ・曲げなどのあらゆる作業に対応できる工具
- パイプレンチ:挟み込み部分のギザギザによってパイプの挟み込みを可能にした工具
(4)切断工具
切断工具とは、ワイヤーや電線など、加工対象物を切断するための工具です。鋭利な部分が広く露出しているため、使用の際は自分や相手を傷つけないように注意しましょう。
種類や用途は次のとおりです。
- ニッパー:持ち手を握り込んで刃を閉じることで配線などを切断する工具
- ハサミ:工業用に切断力やサイズを大きくしたハサミ
- 糸ノコギリ:糸のような細いノコ刃で対象物を切断する手動のノコギリ
(5)電工工具
電工工具とは、主に電気工事関係で使用する工具です。現場作業だけでなく、第二種電気工事の試験でも使用されます。前述までの工具で代用できるものもありますが、電工用で別途用意しておくほうが、安全面や管理面でもおすすめです。
種類や用途は次のとおりです。
- 電工ナイフ:絶縁電線やケーブルの被覆の剥ぎ取りに使用する工具
- 電工ペンチ:電線やケーブルを切断するときに使用する工具
- 圧着端子用圧着工具(リングスリーブ):圧着端子に電線を圧着接続させるときに使用する工具 など
(6)工作機械
人間の力ではなく、機械運動によって工作を行う機械です。強力な回転力やパワーによって、手動では対応できない工作・修理に対応できます。
- 電動ドリル・エンドミル:機械運動によって対象物に穴を空ける工具
- 電動ドライバー:機械運動によってドライバー部分を回転させてネジを締めたり緩めたりする工具
- 電動グラインダー:セットされた砥石やカッターを高速回転させることで対象物を加工する工具
4.治工具の導入の際に注意すべきポイントとは?

治工具を導入する際、やみくもに導入するのは予算や効率の面でおすすめできません。以下では、治工具の導入の際に注意すべきポイントをご紹介します。
(1)自社工程に必要な治工具かどうかを検討する
導入の前に、「治工具の導入が自社にとって本当にメリットがあるのか」をしっかり検討しましょう。
- 効率化・省力化などの具体的な改善につながるのか
- 導入によって逆に現場が混乱しないか
- 作業手順や人員配置で解決できる問題ではないか など
とくに治具の場合は、数十万円単位のコストがかかることも珍しくありません。対費用効果も確認しながら導入を検討してください。
(2)自社で取り扱う製品に合う治工具を導入する
いくら優れた治工具を導入しても、自社製品ならび製造工程に合わないものでは100%性能を発揮できません。自社の製品と製造工程の特徴・問題点に合わせた治工具を導入できるよう、事前に準備を重ねておきましょう。
- 現段階での作業の問題点を抽出する
- 導入担当者と現場作業者との意見をすり合わせる
- 治工具の制作を依頼するメーカーと意見をすり合わせる
- テスト運用での調整を妥協せずに行う など
(3)治工具使用・メンテンナンスについてのルールを決める
治工具の使用についてはルールを決めておきましょう。正しい使い方でなければ、機械の故障やケガにつながる恐れがあります。
また工具の紛失や異物混入につながらないよう、保管場所や持ち出しルールについても決めておくことをおすすめします。
さらに製造設備と同じく日々のメンテナンスを行い、できる限り万全の状態で使用できるように日々気を配りましょう。劣化したまま使用すると、重大な品質事故につながったり大ケガを負ったりなどのリスクが考えられます。
5.治具の開発・改造・メンテナンスに関するご相談はFAプロダクツへ
生産性や製品の品質、現場作業の効率性の向上に寄与する治工具は、製造現場にとっては欠かせない存在です。しかし、事前の検討や使用のルールを決めておかないと、逆に大きなトラブルにつながるかもしれません。
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