1.真空ポンプとは?
日本工業規格(JIS)は真空を以下のように定義しています。
「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態」
また、真空は大気と比べてどのくらい圧力が低いかによって、「低真空」から「極高真空」まで分類され、真空の程度によって用途が変わります。
真空ポンプとは、密閉空間において大気圧以下の真空状態を作り出し、維持するための装置です。密閉の容器内を大気圧よりも低圧力状態にするために、容器から気体を排出します。

プラスチック製品の成形や真空パック製品など、私たちの身の回りでも真空ポンプ技術が利用されているもので溢れています。成形する・包装する・吸い込む・冷却するなどの用途に合わせて、多彩な真空ポンプが導入されています。
真空ポンプについては、以下の動画も参考にしてください。
引用:BBKテクノロジーズ株式会社|真空ポンプの種類と使用方法
2.真空ポンプは何に使う?真空ポンプ技術の身近な例

真空ポンプ技術は、私たちの身の回りで数多く利用されています。
1. 成形
2. 包装
3. 断熱
4. 乾燥
5. 冷却
6. 電子デバイスの製造
順番に見ていきましょう。
(1)成形
真空を作ることで、大気と比較して圧力差ができることを利用し、真空ポンプ技術は成形に用いられています。温めて柔らかくなったプラスチックに、吸着パッドを当ててパッド内を真空状態にすることで、プラスチックを変形させる仕組みです。
金型にかかる圧力が少ないため、一般的な射出成形などに比べて安いコストで作ることができます。自動車の外装部品や卵のケースパック、コンビニ弁当の容器などの成形に用いられています。
射出成形機は原料を溶かし、金型へ射出して成形する機械です。しかし導入時は、型締力や金型サイズといった選定ポイントがいくつかあります。そのためこの記事では、具体的に射出成形機を選定できるようおすすめメーカについてまとめました。
(2)包装
真空になると酸素が減少するためものが酸化しにくくなることを利用して、肉や魚・野菜などをはじめ、スープの粉などを真空包装するためにも用いられます。真空ポンプ技術によって食材の保存性を高めるのです。
最近では真空包装専用のフィルムやポリ袋などを用いて、食材の酸化を防ぐ商品も身近になってきました。
(3)断熱
真空を利用することで熱の伝わりを防ぎ、容器内の熱が冷めにくくしたのが真空断熱技術です。
主に電気ポットや魔法瓶、炊飯器の上ぶたなどに用いられています。容器内は内びんと外びんの二重構造で、この空間が真空の状態です。この二層構造が、熱の伝導と対流を防ぎ、容器に入れたものの長時間保温を可能にしています。
(4)乾燥
圧力が低下すると液体の沸点が下がることを利用し、材料の品質や味などを損なうことなく乾燥させる場面でも真空ポンプ技術が用いられています。熱を加えると劣化しやすい材料も、真空にすることで味や品質を損なうことなく水分を抜き取ることが可能です。
調味料の製造や食材の乾燥、医薬品の乾燥などに用いられています。
(5)冷却
真空ポンプは食材の冷却にも用いられます。
加熱調理後の食材を減圧状態の環境におくことで、食材に含まれる水分が蒸発します。水分が蒸発する際に、食材の熱を奪い冷却する仕組みです。
(6)電子デバイスの製造
真空を作ることで、不純物に相当する気体が減少することを利用して、蛍光灯やネオンサイン、CDなどの電子デバイス製造にも、真空ポンプ技術が用いられています。
放電によってつくられるプラズマ内のイオンを材料にぶつけることで、不純物を除去し、対象の基盤に薄膜を形成させます。
半導体の製造工程は、配線パターニングからチップ化までの工程数が多く、高いクリーン度を求められます。また、半導体の性能や品質の検査も重要であり、半導体の製造歩留まりの向上には、クリーン度対策や洗浄・乾燥工程、検査工程の最適化が欠かせません。
3.真空ポンプの分類
真空ポンプは、気体輸送式と気体溜め込み式に大別されます。

気体輸送式とは、一定体積の気体を外部へ輸送して排出するもので、さらに容積移送式と運動量輸送式に分類されます。
さらに、多種多様な用途によって、上記の表のように数多くの真空ポンプが存在します。
次章で代表的な真空ポンプについて解説します。
4.代表的な真空ポンプの種類と仕組み

数々の真空ポンプの中でも、代表的なものは以下のとおりです。
1. 水封式真空ポンプ
2. 油回転式真空ポンプ
3. ドライ真空ポンプ
4. ターボ分子ポンプ
5. スバッタイオンポンプ
それぞれについて仕組み等を解説します。
(1)水封式真空ポンプ
水封式真空ポンプは、ポンプ内を液体で満たし(水封)、羽根車の回転とともに水のリングを作り、真空状態にします。羽根車が回転することで、水と羽根に囲まれた空間の容積が変化する仕組みを利用して、吸入と排気を繰り返します。水封式真空ポンプは水分を含む処理に適しており、プラスチック成形や化学工業など、さまざまな産業で用いられています。
(2)油回転式真空ポンプ
油回転式真空ポンプは、回転式のケーシング内に油を入れることで、ケーシングとローターの間の機密性を高める仕組みです。油を使うことで回転部を滑らかに動かし、機密性を高めることで高い排気性能を発揮します。
(3)ドライ真空ポンプ
ドライ真空ポンプは、気体を排出する際に油や液体を使用しないことが特徴です。そのため、油や液体が拡散することがなく、クリーンな真空が得られます。
また油や液体の補充や交換などの、定期的なメンテナンスも不要。半導体製造やLED、太陽電池製造など、さまざま用途で導入されています。
(4)ターボ分子ポンプ
ターボ分子ポンプは、動翼と静翼のタービンを有する回転体が高速で回転し、気体の分子を弾き飛ばすことで排気する仕組みです。吸気口に入ってきた気体分子は、回転する動翼に運動量を与えられて下段へ進み、複数の圧縮段階を経て、最終的に排気口から排出されます。
ターボ分子ポンプは、半導体製造やFDP製造、分析や加速器などに用いられています。
(5)スパッタイオンポンプ
スパッタイオンポンプは、超高真空の発生に利用されるポンプの代表です。陽極と陰極で構成されたポンプセルに、電場を印加します。
騒音や振動を抑えながら超真空状態を生み出せるというメリットがあります。
スパッタイオンポンプは、加速器や分析機などに用いられています。
5.真空ポンプを選ぶ5つのポイント

真空ポンプを選ぶ際のポイントを5つ解説します。
1. 電源タイプ
2. 排気速度
3. 真空到達速度
4. 吸入ポート
5. 付加機能
下記で解説する内容を参考に、自社にあった真空ポンプを導入しましょう。
(1)電源タイプ
真空ポンプには、AC電源式と充電式の2種類の電源タイプがあります。
使用する場所にコンセントを挿す場所がある場合はAC電源式、ない場合は充電式がおすすめです。
充電式であれば、事前に充電さえされていればコンセントがなくても真空ポンプを使用できます。一方で、使用中に充電がなくなってしまった場合、コンセントが近くにないと真空ポンプを使用できないため、使用する場所にあわせて選びましょう。
(2)排気速度
排気速度とは、1分間で排気できる空気量のことをさします。数値が高いほど、より短時間での排気が可能です。
また、排気速度が高いものは、大型の空調機にも対応できます。
それぞれの排気速度と、適応機器は以下のとおりです。
| 排気速度 | 適応機器 |
| ~49L/min | ルームエアコン・小型パッケージエアコン |
| 50~69L/min | 大型ルームエアコン・カーエアコン・小型~中型パッケージエアコン・冷蔵庫 |
| 70~129L/min | 中型パッケージエアコン |
| 130L/min~ | 冷蔵倉庫・大型パッケージエアコン |
(3)真空到達速度
真空到達速度とは、絶対真空(完全に真空に近い状態)にどれだけ近づけるかを表した数値です。単位はミクロンで表され、数値が低いほど絶対真空に近く、真空ポンプの性能も高くなります。
真空到達速度は、真空ポンプの性能を測る基準の1つです。なお、一般的な真空ポンプは375ミクロン以下、高性能な機種になると7.5ミクロンほどになります。
(4)吸入ポート
真空ポンプの吸入ポートには、新冷媒用の5/16″フレアと旧冷媒用の1/4″フレアの2種類があります。なかには、2種類の吸入ポートを両方搭載しているものもあります。
基本的に吸入ポートは2種類ありますが、変換アダプターを搭載している機種がほとんどなので、吸入ポートの種類を気にして購入する必要はありません。大型の機種になると、3/8″フレアや1/2″フレアサイズを搭載しているものもあります。
(5)付加機能
真空ポンプは、ローターやモーターの仕様によって、付加機能が変わります。
①ローターの仕様
真空ポンプのローターには、シングルステージ式とツーステージ式の2種類があります。シングルステージ式はローターが1つ、ツーステージ式にはローターが2つ搭載されています。ツーステージ式は2つのローターが搭載されているため、ローターへの負荷を抑えながら、真空度をより高くすることができます。
②モーターの仕様
モーターの仕様には、2ポールモーターと4ポールモーターの2種類があります。ポールとは電極の数のことで、一般的な2ポールモーターは電極を2つ、4ポールモーターは電極が4つ搭載されています。
2ポールモーターは体積が小さいため、真空ポンプ本体の小型化・軽量化できるのがメリットです。
4ポールモーターは電極数が多い分、低回転数で高トルクを発生させられ、静かで熱を持ちにくいという特徴があります。大型のパッケージエアコンなどの真空引きの時間が長いものを使用する場合は、4ポールモーターがおすすめです。
③ガスバラストバルブ
ガスバラストバルブが搭載されている機種と、ない機種があります。
ガスバラストバルブが搭載されていないと、真空ポンプのローター内に水分や冷媒ガスが混入した際に液化したポンプオイルにも混ざり、真空到達度の低下やオイルの劣化など真空ポンプの寿命の減少につながります。
ガスバラストバルブがあれば、水分や冷媒ガスをオイルから分離できます。
ガスバラストバルブがない機種は、ある機種に比べてオイルの交換頻度も上がるため注意が必要です。
6.装置や治具の開発・改造・メンテナンスに関するご相談は株式会社FAプロダクツへ
FAプロダクツは年間200台もの実績がある関東最大級のロボットシステムインテグレーターです。一貫生産体制をとっており、設計から製造までをワンストップで対応。費用・時間にムダなく最適化を行うことができます。
真空ポンプについても、ぜひご相談ください。
また、導入前に「Plant Simulation」や「Process Simulate」のシミュレーションを行うことで、ムダの削減・設備の最適配置・生産性向上を実現できます。
・Plant Simulation:生産ラインや物流フロー全体の流れをシミュレーション
・Process Simulate:ロボットや機械の動作を3Dで再現し、干渉や作業効率を検証
FAプロダクツでは、シミュレーションの活用支援も行っておりますので、ぜひご相談ください!
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